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書籍レビュー『ちゃんと泣ける子に育てよう』

発達に課題があってもなくても、子どもは癇癪を起して暴れまわったり、泣きわめいたりするものです。親にとっては本当に大変な時間ですよね。

特に発達に課題があると、自傷行為や他傷行為を起こしてしまうこともあります。

子どもには感情のコントロールはできません。いや、大人になっても感情のコントロールはなかなか難しいものです。

人は自分の感情はコントロールできなくても、他人には感情をコントロールしてほしいと思ってしまうもの。自分は怒りを爆発させながら、子どもには感情のコントロールを求めて怒鳴りつけてしまう。管理人にもそういう経験が数えきれないほどあります。

『ちゃんと泣ける子に育てよう』の著者、大河原氏は、ネガティブな感情をしっかりと感じさせることが大切だと指摘します。決して否定したり、ポジティブな感情を無理やり押し付けてはいけないと。

子どもは、自分が今感じている激しく突き上がってくる感情が何なのか、説明することができません。何かイヤなこと、到底受け入れがたいことが起こったのは確かなのですが、その状況に対して自分がどんな気持ちを持っているのか、「悲しい」のか、「寂しい」のか、「悔しい」のか、「怖い」のか、言葉で説明することはできません。

ですので、まず大切なのは、今感じている感情に名前があることを、大人が落ち着いて教えてあげることなんです。「あら、悔しいんだね。悔しくて涙が出たね」などと、子どもが感じている感情を大人が代弁してあげることを繰り返すと、子どもは次第に「悔しい」という感情を学んでいきます。そしていずれは泣きわめくのではなく、「そういうことがあると(自分は)悔しい」と言葉で表現できるようになるのです。

子どもがネガティブな感情を全身全霊で感じることを拒否し続けると、本当は悲しかったり悔しかったりするのに、子どもは「それを表に出すことは悪いことだ」と学習してしまい、本当の気持ちを押し殺すようになってしまいます。

ですが、ネガティブな感情は非常にエネルギーが強いもの。押し殺したからといって消えてなくなることはありません。次第に積み重なっていき、思いもよらぬところで爆発してしまうのです。

普段とても穏やかな人が突然キレたり、明るく感じがよく見える人が凶悪犯罪を犯したりするのは、ネガティブな感情の存在を否定し、適切に処理されないまま、心の中でくすぶっていった結果と考えられているようです。

子どもがパニックを起こしてしまうと、親はどうしても周りに気を遣い、居たたまれない気持ちになってしまいます。とても苦しい時間ですよね。でも、「今は感情を適切に言語化できるようになるための学習時間」と考えると、少しは楽になれるかもしれません。

感情をコントロールできない子どもに悩む親の気持ちを楽にしてくれる本です。ぜひ手に取って読んでみてください。

大河原 美以(2006)『ちゃんと泣ける子に育てよう