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イギリスの探究:Practical Investigation

写真はイメージです(©写真AC

前回、プロジェクト型学習(PBL)についてご紹介しましたが、香川大学の笠先生が2020年に発表された論文では、イギリスでは中等科学教育では “Investigation” という活動を取り入れていることが紹介されています。

 

“Investigation” は日本語で「調査」とか「捜査」という意味です。

 

イギリスでは、1970年代に、学校における科学の活動について大規模な調査が実施されていますが、その時点で「記号表現の使用」、「装置と測定機器の使用」、「観察の課題」、「解釈と応用」だけでなく、「Investigations の設計」、「Investigations の実行」も評価対象に加えていたようです。

 

この時、”Investigation” について「生徒が自分では直ちに答えも答えにいたるルーチン的な方法もわからない課題に取り組む」活動と定義されているそうです。まさに、今、日本の子どもたちが取り組む探究活動ですね。

 

この “Investigation” で大切なのは、課題を設定する際に、「探究される問題ははるかにささやかで,生徒がその時点で把握できる範囲のものである必要がある」という点に留意することのようです。

 

これは、大学で卒業論文などの研究テーマを設定する時にも気を付けなければならないことですね。

 

子どもたちに関心のあるテーマを聞くと、たとえば「プラスチックごみ問題」とか「ネットいじめ問題」など壮大なテーマをあげてきます。社会問題に関心があるのは素晴らしいことですが、限られた時間と予算でできることではありません。

 

限られた期限(数か月から数年)で完了できること、あまり予算をかけなくてもできることに研究テーマを絞り込む必要があります。この作業には手間がかかるので、大人の支援が必要です。

 

今の日本の教育環境では、先生たちが忙しすぎること、一人の先生が担当する生徒数が多すぎることなどで、子どもたちの探究活動に十分な時間をかけることができないのではないでしょうか。

 

先生がゆとりをもって指導できる体制を整えることが本当に大切だと思います。

 

笠潤平(2020)探究活動の定義と探究活動に至る授業の設計について

インクルーシブな教育を実現できる探究学習

写真はイメージです(©写真AC

日本で学校に馴染めなかったお子さんが、家族の転勤で海外の学校に入ることになった時、日本のように全員が同じ教科書を使うのではなく、そのお子さんは虫が好きだったので、ひたすら虫に関する本を読んでもいいと言われていたそうです。

 

どうも、好きな虫に絡めて、先生が国語(この場合は英語ですね)や数学、理科など、教科学習にうまく結びつけてくれていたようで、苦手な数学はもちろん、英語の読み書きにも不自由しなくなったのだとか。

 

この話を聞いて、「この教育方法は一体なんというのだろう?」とずっと考えていました。数年前に『プロジェクト型学習』(PBL:Project-Based Learning)について学ぶ機会があり、「あれはきっとPBLだったのではないか」と考えるようになりました。

 

PBLは日本でいう探究学習と考えて大丈夫です。日本でも自由研究のように子どもが主体的に学問的な追究をする機会はありますが、自由研究がほぼ放ったらかしであるのに対し、PBLは綿密な計画を元に、先生のきめ細やかな指導が入ることが多いようです。

 

学習指導要領が改訂されて、探究学習が義務付けられましたが、学校によって取り組み方が全く異なるようです。一部の学校では近隣の大学や地域社会の協力を得て、実践的な素晴らしい取り組みがなされていますが、中には生徒個人に何か探究をするように伝えるだけで、従来の自由研究のような扱いにとどまっているところもあります。

 

海外でもPBLを導入する全ての学校で成功しているかというと、決してそうではないようですが、PBLがうまく機能している学校ではPBLなしの学習指導はあり得ないと考えるところもあるようです。

 

たとえば、こちらの記事 “Project Based Learning for Special Education and Inclusion” では、学習内容が保持される(Content Retention)、深く理解できるようになる(Deeper Understanding)、多感覚の指導が可能になる(Multi-Sensory Instruction)、協力し合うことや協働することを教えられる(Cooperation and Collaboration)、紙ベースのテスト以外の方法で生徒を評価できる、などの利点が説明されています。

 

何よりも子どもたちの学習意欲が高まる(Student Engagement)のがいいようです。

日本では、教科学習の枠外で探究学習が行われますが、海外では教科学習の一環としてPBLが行われる場合もあります。勉強が苦手だったり、一斉授業の抵抗感のあるお子さんには、教科学習を探究的に学ぶ工夫ができるといいかもしれません。