インクルーシブな教育を実現できる探究学習

写真はイメージです(©写真AC

日本で学校に馴染めなかったお子さんが、家族の転勤で海外の学校に入ることになった時、日本のように全員が同じ教科書を使うのではなく、そのお子さんは虫が好きだったので、ひたすら虫に関する本を読んでもいいと言われていたそうです。

 

どうも、好きな虫に絡めて、先生が国語(この場合は英語ですね)や数学、理科など、教科学習にうまく結びつけてくれていたようで、苦手な数学はもちろん、英語の読み書きにも不自由しなくなったのだとか。

 

この話を聞いて、「この教育方法は一体なんというのだろう?」とずっと考えていました。数年前に『プロジェクト型学習』(PBL:Project-Based Learning)について学ぶ機会があり、「あれはきっとPBLだったのではないか」と考えるようになりました。

 

PBLは日本でいう探究学習と考えて大丈夫です。日本でも自由研究のように子どもが主体的に学問的な追究をする機会はありますが、自由研究がほぼ放ったらかしであるのに対し、PBLは綿密な計画を元に、先生のきめ細やかな指導が入ることが多いようです。

 

学習指導要領が改訂されて、探究学習が義務付けられましたが、学校によって取り組み方が全く異なるようです。一部の学校では近隣の大学や地域社会の協力を得て、実践的な素晴らしい取り組みがなされていますが、中には生徒個人に何か探究をするように伝えるだけで、従来の自由研究のような扱いにとどまっているところもあります。

 

海外でもPBLを導入する全ての学校で成功しているかというと、決してそうではないようですが、PBLがうまく機能している学校ではPBLなしの学習指導はあり得ないと考えるところもあるようです。

 

たとえば、こちらの記事 “Project Based Learning for Special Education and Inclusion” では、学習内容が保持される(Content Retention)、深く理解できるようになる(Deeper Understanding)、多感覚の指導が可能になる(Multi-Sensory Instruction)、協力し合うことや協働することを教えられる(Cooperation and Collaboration)、紙ベースのテスト以外の方法で生徒を評価できる、などの利点が説明されています。

 

何よりも子どもたちの学習意欲が高まる(Student Engagement)のがいいようです。

日本では、教科学習の枠外で探究学習が行われますが、海外では教科学習の一環としてPBLが行われる場合もあります。勉強が苦手だったり、一斉授業の抵抗感のあるお子さんには、教科学習を探究的に学ぶ工夫ができるといいかもしれません。